彼女からの手紙が来た。
彼女は1ヶ月前、交通事故で記憶喪失になった。
2週間通ったけど、意識戻らなかった。

俺は諦めて。
彼女の可哀想な姿を見たくなくて。
病院に行く事を止めた。

でもやっぱり、電話来るかなとか思って、ケータイ見たり。
でもやっぱり、病院には行かなかった。

そんなある日の事だ。
彼女から手紙が来た。
吃驚した。
何故。
記憶すら無いのに。
俺は諦めてしまったのに。

恐る恐る封を切る。
中から出て来たのは、1枚の便箋だった。

――今日和、健二さん。涼子です。
行き成り御手紙出して、御免なさい。吃驚したと思います。
健二さんも知っての通り、私は記憶が無くなって仕舞いました。
家族の事も、友達の事も、大好きだった此の街のことさえ、忘れて仕舞いました。
けれど、はっきりと、鮮明に憶えていたのは。
健二さんの優しい笑顔でした…。

若し良かったら、また御付き合いして下さい。

                                涼子――
涙が出た。
1人部屋で泣いた。
彼女は家族や友達さえ覚えて居なかったのに、俺の事は覚えて居てくれた。

そう思うと、自分が恥ずかしくなってきた。
袖で涙を拭って、出かける用意をする。
彼女に逢う為に。
空は快晴。風が気持ち良い。
小さな花を摘んで、持って行ってあげようか。