「私は、弱い人間なんかじゃないのよ」 雨の降り頻る6月の初め。丁度10回目のセックスの後、彼女はラークの煙を吐き出しながら、そう呟いた。 実際、僕は彼女が「弱い」などと思った事は無かった。彼女は「強い」人だった。 少し気が強くて、容姿も学歴も性格も良くて、自分で何でも出来る人だ。 誰からも信頼され、頼りにされる。そんな人だったから。 僕とは正反対な人だったから。 彼女は泣いた。 声を上げる訳では無かったのだが、其の分涙が止まらなく。 彼女は強くなんかなかった。彼女の強さは鎧の堅さだった。其の鎧は僕の言葉で脆く崩れ落ちた。 だから彼女は泣いた。 鎧の中は弱い女の子だった。何でも無い、彼女自身があった。 僕は彼女を抱きしめる。 僕と同じ彼女を抱きしめる。しっかり、ぎゅっと。 僕の頭の中に彼女の言葉がこだました。 ―私ハ弱イ人間ナンカジャナイノヨ―